SLAM技術入門|自律移動ロボットの目と脳【2026年】

SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は、ロボットが未知の環境を探索しながら地図を作成し、同時に自己位置を推定する技術です。自動運転車、AGV、ドローン、掃除ロボットなど、あらゆる自律移動システムの基盤技術として不可欠です。本記事では、SLAMの基本原理から実装方法、最新動向まで徹底解説します。

SLAMとは?基本概念と重要性

SLAM(スラム)は「Simultaneous Localization and Mapping」の略で、「自己位置推定」と「地図作成」を同時に行う技術です。1986年に概念が提唱され、現在では自律移動の核心技術となっています。

SLAMが解決する「鶏と卵」問題

自律移動ロボットには以下のジレンマがあります:

  • 正確な地図を作るには、自分の位置を知る必要がある
  • 正確な位置を知るには、地図が必要

SLAMは、この両方を確率的に同時解決する技術です。

SLAMの基本構成要素

要素 役割 具体例
センサー 環境情報の取得 LiDAR、カメラ、IMU
フロントエンド 特徴抽出・マッチング 特徴点検出、スキャンマッチング
バックエンド 最適化・推定 グラフ最適化、フィルタリング
ループクロージング 累積誤差修正 場所の再認識
地図表現 環境の記録 点群、グリッド、特徴点

AGV・AMRはSLAM技術を活用した代表的な自律移動ロボットです。

SLAMの種類と特徴

使用するセンサーや手法によって、SLAMは複数の種類に分類されます。

1. LiDAR SLAM

レーザーセンサーで環境をスキャンする方式です。最も精度が高く、産業用途で広く使われています。

項目 内容
精度 非常に高い(cm級)
環境 屋内外両対応
照明条件 影響なし(暗所可)
コスト 高い(数十万〜数百万円)
代表手法 Cartographer、LOAM、LIO-SAM

2. Visual SLAM(vSLAM)

カメラ画像を使用する方式です。低コストで豊富な情報が得られます。

項目 内容
精度 中〜高(環境依存)
環境 特徴が多い環境向け
照明条件 影響大(暗所苦手)
コスト 低い(カメラのみ)
代表手法 ORB-SLAM3、RTAB-Map、VINS-Fusion

3. RGB-D SLAM

深度カメラ(Kinect、RealSense等)を使用する方式です。

  • 色情報と深度情報を組み合わせ
  • 屋内向け(有効距離に制限)
  • 代表手法:RTAB-Map、ElasticFusion

4. センサーフュージョンSLAM

複数センサーを統合する最新のアプローチです。

  • LiDAR + カメラ + IMU を統合
  • 各センサーの弱点を補完
  • 自動運転車で主流
  • 代表手法:LVI-SAM、FAST-LIO2

SLAMの主要アルゴリズム解説

代表的なSLAMアルゴリズムの仕組みを解説します。

フィルタベースSLAM

確率的フィルタを用いて逐次的に推定を更新します。

  • EKF-SLAM:拡張カルマンフィルタを使用、計算量大
  • Particle Filter SLAM:パーティクルで分布を表現
  • FastSLAM:効率的なパーティクル更新

グラフベースSLAM

ポーズと観測をグラフ構造で表現し、最適化問題として解きます。現在の主流です。

  • ノード:ロボットのポーズ(位置・姿勢)
  • エッジ:ポーズ間の制約(オドメトリ、観測)
  • 最適化:グラフ全体の整合性を最大化

代表的なオープンソースSLAM

名称 センサー 特徴 用途
Cartographer 2D/3D LiDAR Google開発、高精度 屋内AGV
ORB-SLAM3 カメラ/RGB-D 特徴点ベース、堅牢 研究、AR
RTAB-Map RGB-D/LiDAR 多センサー対応 汎用
LIO-SAM LiDAR+IMU リアルタイム、高精度 自動運転
VINS-Fusion カメラ+IMU VIO高精度 ドローン

SLAMの応用分野

SLAMは様々な自律移動システムで活用されています。

1. 自動運転車

高精度3D地図の作成と自己位置推定に使用されています。

  • LiDAR SLAMによる高精度マッピング
  • HDマップとのローカライゼーション
  • GPS非依存の自己位置推定

自動運転技術の基盤となっています。

2. 物流・倉庫ロボット

倉庫内の自律走行に不可欠です。

  • 施設全体の地図自動生成
  • 動的障害物への対応
  • フリート全体での地図共有

倉庫ロボットで広く採用されています。

3. 家庭用ロボット

掃除ロボットの主要技術として普及しています。

  • 部屋のレイアウト学習
  • 効率的な掃除経路計画
  • 充電ステーションへの自動帰還

4. ドローン

GPS不可環境での自律飛行に活用されています。

  • 屋内・トンネル内の飛行
  • 点検・調査ミッション
  • Visual-Inertial Odometry(VIO)

5. AR/VR

拡張現実の位置合わせ技術として使用されています。

  • Apple ARKit / Google ARCore
  • Meta Quest の Inside-Out トラッキング
  • Microsoft HoloLens の空間認識

SLAM実装の実践ガイド

SLAMを実際に動かすための実践的なガイドです。

開発環境の構築(ROS 2)

# ROS 2 Humble インストール(Ubuntu 22.04)
sudo apt install ros-humble-desktop

# SLAM関連パッケージ
sudo apt install ros-humble-slam-toolbox
sudo apt install ros-humble-nav2-bringup
sudo apt install ros-humble-cartographer-ros

主要パラメータ調整

パラメータ 影響 調整指針
解像度 地図の細かさ 5cm(屋内)〜20cm(屋外)
スキャン間隔 処理負荷・精度 10Hz程度が一般的
ループ閾値 誤検出・見逃し 環境に応じて調整
最大距離 有効範囲 センサー特性に合わせる

典型的な問題と対策

問題 原因 対策
ドリフト(累積誤差) 観測ノイズの蓄積 ループクロージング強化
特徴不足 単調な環境 マルチセンサー統合
動的障害物 人や車両の移動 動体除去フィルタ
計算負荷 大規模環境 サブマップ分割

ROS入門でロボット開発の基礎を学べます。

SLAMの最新研究動向(2026年)

SLAM技術は急速に進化しています。最新の研究トレンドを紹介します。

1. ディープラーニングSLAM

ニューラルネットワークを活用した新しいアプローチです。

  • 学習ベース特徴:SuperPoint、LoFTR
  • 深度推定:単眼カメラから深度を推定
  • End-to-End SLAM:全処理をNNで実現

2. Neural Radiance Fields(NeRF)との融合

NeRFによる高品質な3D表現とSLAMの統合が研究されています。

  • フォトリアルな地図生成
  • 任意視点でのレンダリング
  • NICE-SLAM、iMAP等の手法

3. 大規模環境SLAM

都市規模の環境に対応する技術が発展しています。

  • 階層的地図表現
  • 分散SLAM(複数ロボット協調)
  • クラウドSLAM

4. セマンティックSLAM

物体認識と統合し、意味理解を含む地図を作成します。

  • 「机」「椅子」などのラベル付き地図
  • 物体レベルのSLAM
  • タスク指向のナビゲーション

Embodied AIとの統合も進んでいます。

まとめ|SLAM技術の重要性と今後

SLAMは自律移動ロボットの「目」と「脳」として不可欠な技術です。

SLAM選定のポイント

  • 精度要件:cm級が必要ならLiDAR、それ以外はVisual
  • 環境条件:屋外・暗所ならLiDAR、特徴豊富ならカメラ
  • コスト:低予算ならカメラベース
  • リアルタイム性:処理能力と精度のトレードオフ

今後の展望

  • ディープラーニングとの融合による高性能化
  • センサーの低価格化による普及拡大
  • 大規模環境・長期運用への対応
  • セマンティック理解との統合

関連記事としてフィジカルAIの動向もご覧ください。

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