手術ロボット(手術支援ロボット)は、医療の精密化と低侵襲化を実現する革新技術です。ダヴィンチ(da Vinci)を筆頭に、hinotori、Hugoなど新興勢力も台頭。本記事では、主要製品の比較、保険適用、導入コスト、今後の展望を徹底解説します。
手術ロボットとは

手術ロボット(Surgical Robot)とは、外科手術において医師の操作を支援し、より精密で低侵襲な手術を可能にするロボットシステムです。ロボットが自律的に手術を行うわけではなく、医師がコンソールから遠隔操作する「マスター・スレーブ方式」が主流です。
手術ロボットの利点
- 高精度:人間の手の震えを除去、ミリ単位の精密操作
- 低侵襲:小さな切開で手術可能、患者の回復が早い
- 3D視野:拡大された立体映像で術野を確認
- 疲労軽減:座位での操作により医師の負担軽減
市場規模と成長
世界の手術ロボット市場は2025年で約150億ドル(約2.2兆円)、2030年には300億ドル超に成長すると予測されています。高齢化、低侵襲手術需要の増加、新興市場の成長が主要ドライバーです。
ダヴィンチ(da Vinci)

ダヴィンチは、Intuitive Surgical社が開発した世界で最も普及している手術ロボットです。
開発の歴史
ダヴィンチの原型は、1990年代にDARPA(米国防高等研究計画局)が開発した遠隔手術技術に遡ります。戦場での遠隔手術を目的としていましたが、民生用に転用され、2000年にFDA認可を取得。以来、手術ロボットの代名詞となっています。
現行モデル
- da Vinci Xi:最上位モデル。4本のアームで複雑な手術に対応
- da Vinci X:コストを抑えた汎用モデル
- da Vinci SP:単孔式手術向け。1つの切開から手術
- da Vinci 5:2024年発表の最新モデル。AIによる術中支援機能
da Vinci 5の新機能
2024年に発表されたda Vinci 5は、AIと機械学習を活用した「Force Feedback(力覚フィードバック)」機能を初搭載。組織の硬さを医師に伝え、より繊細な操作を可能にしています。
導入実績
全世界で8,000台以上が稼働し、累計1,200万件以上の手術を支援。日本では約600台が導入されています(2025年時点)。
hinotori(ヒノトリ)

hinotoriは、メディカロイド社(川崎重工業とシスメックスの合弁)が開発した国産手術ロボットです。
開発の背景
日本の医療機器メーカーがダヴィンチに対抗できる国産ロボットを目指し、2020年に発売。「日本の医療現場に最適化」をコンセプトに、コンパクト設計と使いやすさを追求しています。
特徴とスペック
- アーム数:4本(ダヴィンチと同等)
- 8K対応:高精細な術野映像
- コンパクト設計:日本の手術室サイズに最適化
- 使用料モデル:従量課金オプションで初期投資を軽減
導入状況
2024年時点で国内約100施設に導入。泌尿器科、婦人科を中心に適用拡大中です。海外展開も開始されています。
その他の主要製品

ダヴィンチ、hinotori以外の主要手術ロボットを紹介します。
Hugo RAS(Medtronic)
医療機器大手メドトロニック社が開発。モジュラー設計で、必要なアーム数を柔軟に選択可能。2021年から欧州で展開開始、2024年に日本でも薬事承認取得。
Versius(CMR Surgical)
英国発のVersiusは、小型・軽量が特徴。各アームが独立しており、手術室への設置が容易。欧州・アジアで急速に導入が進んでいます。
Senhance(Asensus Surgical)
アイトラッキング(視線追跡)機能を搭載し、医師の視線でカメラを操作。触覚フィードバック機能も標準装備しています。
MANUSROBO(A-Traction)
韓国発の手術ロボット。低価格帯での市場参入を目指し、新興国市場をターゲットにしています。
主要製品比較表

主要手術ロボットを比較します。
| 製品 | メーカー | アーム数 | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| da Vinci Xi | Intuitive Surgical | 4本 | 実績最多、エコシステム充実 | 3〜4億円 |
| da Vinci 5 | Intuitive Surgical | 4本 | AI支援、力覚フィードバック | 4〜5億円 |
| hinotori | メディカロイド | 4本 | 国産、コンパクト、8K対応 | 2〜3億円 |
| Hugo RAS | Medtronic | 最大4本 | モジュラー設計、柔軟性 | 2〜3億円 |
| Versius | CMR Surgical | 最大4本 | 小型軽量、設置容易 | 1.5〜2億円 |
保険適用と診療報酬

日本での手術ロボット使用に関する保険制度を解説します。
保険適用の対象術式
2024年時点で、以下の術式がロボット支援手術として保険適用されています。
- 泌尿器科:前立腺全摘除術、腎部分切除術、膀胱全摘除術
- 婦人科:子宮全摘術、子宮筋腫核出術
- 消化器外科:胃切除術、直腸切除術、食道切除術
- 呼吸器外科:肺悪性腫瘍手術
- 心臓外科:僧帽弁形成術
診療報酬
ロボット支援手術は、腹腔鏡手術に対して数万円〜十数万円の加算が認められています。ただし、設備投資に対して十分な収益が得られるかは、手術件数と術式によります。
施設基準
ロボット支援手術を行うには、施設基準を満たす必要があります。
- 認定医の在籍
- 一定数以上の手術実績
- 緊急時の体制整備
導入コストとROI

手術ロボット導入の費用対効果を解説します。
初期コスト
- 本体価格:1.5〜5億円(機種による)
- 設置工事:1,000〜3,000万円
- トレーニング:500〜1,000万円
ランニングコスト
- 保守契約:年間2,000〜4,000万円
- 消耗品(鉗子等):1手術あたり20〜40万円
採算シミュレーション
年間200件のロボット支援手術を実施した場合の試算:
- 診療報酬増加:約4,000万円/年
- 入院日数短縮効果:約2,000万円/年
- ランニングコスト:約6,000万円/年
- 初期投資回収期間:7〜10年
純粋な収益性だけでなく、病院のブランド価値、患者獲得効果も考慮する必要があります。
AI統合と今後の展望

手術ロボットの今後の発展方向を解説します。
AIによる術中支援
da Vinci 5に代表されるように、AIによる術中支援機能が進化しています。
- 画像認識:臓器・血管の自動識別
- リスク警告:危険な操作の事前警告
- 術中ナビゲーション:最適な切開位置の提示
自律型手術ロボットへの道
現在の手術ロボットは医師の操作を前提としていますが、将来的には特定の工程を自律的に実行するロボットの研究が進んでいます。2022年にはジョンズホプキンス大学が、豚の腸を自律縫合するロボットを発表しました。
遠隔手術の実現
5G/6G通信の発展により、遠隔地からのロボット手術が現実味を帯びています。2024年には日本でも、遠隔手術の実証実験が行われています。
よくある質問

Q. 手術ロボットは安全ですか?
適切なトレーニングを受けた医師が操作する限り、安全性は高いです。むしろ、人間の手の震えを除去し、精密な操作が可能になるため、従来手術より安全とされるケースもあります。
Q. ロボット手術の費用は患者負担ですか?
保険適用術式であれば、通常の医療保険が適用されます。患者負担は腹腔鏡手術と同程度〜やや高額です。保険適用外の術式は自費となります。
Q. どの病院でロボット手術を受けられますか?
2025年時点で、国内約700施設にダヴィンチまたはhinotoriが導入されています。大学病院、がんセンター、大規模総合病院が中心です。
Q. 手術ロボットで医師は不要になりますか?
現時点では不要になりません。ロボットはあくまで「手術支援」であり、判断と操作は医師が行います。将来的にも、医師の役割は変化しても消滅することは考えにくいです。
Q. hinotoriとダヴィンチはどちらが良いですか?
性能面では大きな差はありません。ダヴィンチは実績とエコシステムの充実、hinotoriはコストパフォーマンスと国内サポートが強みです。病院の状況に応じた選択が推奨されます。
まとめ

手術ロボットは、医療の精密化と低侵襲化を実現する革新技術として、急速に普及しています。ダヴィンチが市場をリードする中、hinotori、Hugo、Versiusなど競合も台頭し、選択肢が広がっています。
AI統合、遠隔手術、自律化など、今後の技術進化も期待されます。医療機関にとっては高額投資ですが、患者へのメリットと病院のブランド価値向上を考慮した導入判断が求められます。
https://ainow.jp/physical-ai/

https://ainow.jp/medical-ai-guide-2026/



