AINOW編集部です。フランスのAIスタートアップMistralが、企業向けAI市場に本格参入することを発表しました。新たに発表された「Le Chat Enterprise」は、企業の生産性とプライバシーを重視した統合AIアシスタントプラットフォームです。また、同時に発表された「Medium 3」モデルは、より大きなモデルを凌駕する性能を、わずかなコストで実現しています。本記事では、Mistralの新製品の特徴と、企業AI市場における意義について詳しく解説します。
この記事のサマリー
- Mistralが企業向けAIプラットフォーム「Le Chat Enterprise」を発表
- 新モデル「Medium 3」は、Claude 3.7 Sonnetの90%以上の性能を1/8のコストで実現
- プライバシー重視の設計と柔軟なデプロイメントオプションで企業ニーズに対応
Le Chat Enterprise:企業の生産性とプライバシーを両立するAIプラットフォーム

Le Chat Enterpriseは、企業のデータ保護と監査機能を重視して設計されたAIアシスタントプラットフォームです。Webブラウザやモバイルアプリから利用可能で、ChatGPTのような使い勝手を提供しながら、企業特有の要件に対応しています。
企業向けに最適化された主要機能
Le Chat Enterpriseの主な特徴として、以下の機能が挙げられます:
- 企業内のプライベートデータソース(Google Drive、SharePoint、Gmailなど)への安全なアクセス
- 自動要約と引用機能を備えたドキュメントライブラリ
- ノーコードタスク自動化のためのカスタムコネクターとエージェントビルダー
- カスタムモデル統合とメモリベースのパーソナライゼーション
Mistral Medium 3:コスト効率の高い高性能AIモデル

Mistral Medium 3は、同社のモデルラインナップにおいて新たな性能層を確立しました。このモデルは、Claude 3.7 Sonnetの90%以上の性能を、わずか1/8のコストで実現しています。具体的には、入力トークン100万あたり0.40ドル、出力トークン100万あたり20.80ドルという競争力のある価格設定となっています。
卓越したコーディング性能
ベンチマークテストでは、Mistral Medium 3は特にソフトウェア開発タスクにおいて優れた性能を示しています。HumanEvalやMultiPL-Eなどのコーディングテストでは、Claude 3.7 SonnetやOpenAIのGPT-4oモデルを凌駕する結果を出しています。
企業のデータ保護とコンプライアンスへの対応

Mistralの本拠地であるEUの厳格なデータ保護法(GDPR)とEU AI法に準拠した設計により、企業のデータ保護要件を満たすことができます。特に、中規模から大規模企業、および従来型企業にとって、セキュリティとデータストレージポリシーを重視する場合に適しています。
柔軟なデプロイメントオプション
Le Chat Enterpriseは、以下のデプロイメントオプションをサポートしています:
- パブリッククラウド
- プライベートVPC
- オンプレミスホスティング
今後の展開と利用可能性

Mistral Medium 3は現在、MistralのLa Plateforme APIとAmazon Sagemakerで利用可能です。また、IBM WatsonX、NVIDIA NIM、Azure AI Foundry、Google Cloud Vertexへの対応も予定されています。
Le Chat EnterpriseはGoogle Cloud Marketplaceで利用可能で、まもなくAzure AIとAWS Bedrockでも利用可能になる予定です。個人や小規模チーム向けのLe Chat ProとTeamプランも改善され、すべてのプランでLe Chat Enterpriseのコア機能を利用できます。
企業のAI導入を加速するMistralの戦略
Mistralは、高効率なモデルとカスタマイズ可能な企業プラットフォームを組み合わせることで、企業におけるスケーラブルでプライバシーを尊重したAI導入の障壁を下げることを目指しています。金融サービス、エネルギー、医療などの分野で既にベータテストが進行中であり、ドメイン固有のワークフローや顧客向けソリューションの構築に活用されています。