AWS AI半導体の概要
AWSは自社開発のAI半導体「Trainium」(学習用)と「Inferentia」(推論用)を展開しています。NVIDIA GPUの代替として、コスト効率の高いAIワークロード処理を実現します。
なぜAWSは自社チップを開発するのか
- コスト削減:NVIDIAへの依存度を下げる
- 供給安定:GPU不足リスクの軽減
- 差別化:AWS独自の価値提供
- 最適化:AWSサービスとの深い統合
AWS AI半導体の歴史
| 年 | チップ | 概要 |
|---|---|---|
| 2018年 | Inferentia | 初代推論チップ発表 |
| 2019年 | Inferentia | Inf1インスタンス提供開始 |
| 2021年 | Trainium | 学習用チップ発表 |
| 2022年 | Inferentia2 | 第2世代推論チップ |
| 2023年 | Trainium2 | 第2世代学習チップ発表 |
| 2024年 | Trainium2 | Trn2インスタンス提供開始 |
Trainium(学習用チップ)
Trainium2の仕様
- 演算性能:約2.8倍(Trainium比)
- メモリ:96GB HBM3
- 帯域幅:1.5TB/s
- 製造プロセス:5nm
対応モデル規模
- 単一インスタンス:最大700億パラメータ
- クラスター:最大3,000億パラメータ以上
- Trn2 UltraCluster:100,000チップまでスケール
EC2インスタンス
| インスタンス | チップ数 | メモリ | 用途 |
|---|---|---|---|
| trn1.2xlarge | 1 | 32GB | 小規模学習 |
| trn1.32xlarge | 16 | 512GB | 大規模学習 |
| trn1n.32xlarge | 16 | 512GB | ネットワーク強化版 |
| trn2.48xlarge | 16 | 1.5TB | 最新世代 |
Inferentia(推論用チップ)
Inferentia2の仕様
- 演算性能:最大190 TFLOPS(BF16)
- メモリ:32GB HBM2e
- 帯域幅:820GB/s
- レイテンシ:前世代比10倍改善
EC2インスタンス
| インスタンス | チップ数 | メモリ | 用途 |
|---|---|---|---|
| inf1.xlarge | 1 | 8GB | 小規模推論 |
| inf1.24xlarge | 16 | 128GB | 大規模推論 |
| inf2.xlarge | 1 | 32GB | LLM推論 |
| inf2.48xlarge | 12 | 384GB | 大規模LLM |
AWS Neuron SDK
概要
NeuronはAWS AI半導体用のソフトウェア開発キットです:
- フレームワーク統合:PyTorch、TensorFlow、JAX対応
- コンパイラ:モデル最適化と変換
- ランタイム:効率的な実行環境
- プロファイラ:パフォーマンス分析ツール
対応フレームワーク
- PyTorch:torch-neuronx / torch-neuron
- TensorFlow:tensorflow-neuronx
- JAX:jax-neuronx
- Transformers:Hugging Face統合
モデル変換の流れ
- 既存のPyTorch/TensorFlowモデルを用意
- Neuronコンパイラでコンパイル
- 最適化されたモデルをデプロイ
- Neuronランタイムで実行
コスト比較
GPUとの価格比較
| インスタンス | 時間単価 | 用途 |
|---|---|---|
| p4d.24xlarge (A100) | $32.77 | GPU学習 |
| trn1.32xlarge | $21.50 | Trainium学習 |
| p3.2xlarge (V100) | $3.06 | GPU推論 |
| inf2.xlarge | $0.76 | Inferentia推論 |
コスト削減効果
- 学習コスト:最大50%削減(GPUインスタンス比)
- 推論コスト:最大70%削減(GPUインスタンス比)
- TCO:大規模運用で顕著な効果
対応モデルとユースケース
対応LLM
- Llama 2/3:7B〜70B
- Mistral:7B
- GPT-NeoX:20B
- BLOOM:176B(分散)
- Stable Diffusion:画像生成
AWS Bedrockとの連携
- Bedrock:フルマネージドの生成AIサービス
- 基盤モデル:Claude、Titan、Llama 2など
- インフラ:Trainium/Inferentiaで高効率運用
SageMakerとの統合
- 学習:SageMaker TrainingでTrainiumを使用
- 推論:SageMaker InferenceでInferentiaを使用
- MLOps:パイプライン全体でAWSチップを活用
導入事例
Amazon自社サービス
- Alexa:音声認識・自然言語理解
- Amazon Search:検索ランキング
- Prime Video:コンテンツレコメンデーション
外部企業
- Anthropic:ClaudeモデルのAWS上での運用
- Stability AI:Stable Diffusionの学習
- Hugging Face:モデルホスティング
NVIDIA GPUとの使い分け
AWS AI半導体を選ぶべき場合
- コスト効率を重視
- AWS上で完結するワークロード
- 大規模な推論サービス運用
- Neuron SDKで対応済みのモデル
NVIDIA GPUを選ぶべき場合
- 最新モデルの即座の対応が必要
- カスタムモデル開発
- マルチクラウド運用
- 既存のCUDAコードベースの活用
今後の展望
ロードマップ
- 2024年:Trainium2の本格展開
- 2025年:Trainium3(予測)の開発
- 2026年以降:さらなる性能向上とモデル対応拡大
競合状況
- Google TPU:GCP専用チップ
- Microsoft Maia:Azure向けチップ(開発中)
- 各社の動向:クラウド大手の自社チップ開発が加速
まとめ
AWS TrainiumとInferentiaは、NVIDIA GPU依存を軽減しながらコスト効率の高いAI処理を実現します。Neuron SDKによるフレームワーク統合も進み、多くのLLMが対応しています。
特に大規模な推論ワークロードでは、Inferentia2の採用でコストを大幅に削減できます。AWSを主要なクラウドとして使用している企業にとって、TrainiumとInferentiaは重要な選択肢となるでしょう。

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