AWS Trainium/Inferentia完全ガイド|AWSのAI半導体戦略【2026年】

AWS AI半導体の概要

AWSは自社開発のAI半導体「Trainium」(学習用)と「Inferentia」(推論用)を展開しています。NVIDIA GPUの代替として、コスト効率の高いAIワークロード処理を実現します。

なぜAWSは自社チップを開発するのか

  • コスト削減:NVIDIAへの依存度を下げる
  • 供給安定:GPU不足リスクの軽減
  • 差別化:AWS独自の価値提供
  • 最適化:AWSサービスとの深い統合

AWS AI半導体の歴史

チップ 概要
2018年 Inferentia 初代推論チップ発表
2019年 Inferentia Inf1インスタンス提供開始
2021年 Trainium 学習用チップ発表
2022年 Inferentia2 第2世代推論チップ
2023年 Trainium2 第2世代学習チップ発表
2024年 Trainium2 Trn2インスタンス提供開始

Trainium(学習用チップ)

Trainium2の仕様

  • 演算性能:約2.8倍(Trainium比)
  • メモリ:96GB HBM3
  • 帯域幅:1.5TB/s
  • 製造プロセス:5nm

対応モデル規模

  • 単一インスタンス:最大700億パラメータ
  • クラスター:最大3,000億パラメータ以上
  • Trn2 UltraCluster:100,000チップまでスケール

EC2インスタンス

インスタンス チップ数 メモリ 用途
trn1.2xlarge 1 32GB 小規模学習
trn1.32xlarge 16 512GB 大規模学習
trn1n.32xlarge 16 512GB ネットワーク強化版
trn2.48xlarge 16 1.5TB 最新世代

Inferentia(推論用チップ)

Inferentia2の仕様

  • 演算性能:最大190 TFLOPS(BF16)
  • メモリ:32GB HBM2e
  • 帯域幅:820GB/s
  • レイテンシ:前世代比10倍改善

EC2インスタンス

インスタンス チップ数 メモリ 用途
inf1.xlarge 1 8GB 小規模推論
inf1.24xlarge 16 128GB 大規模推論
inf2.xlarge 1 32GB LLM推論
inf2.48xlarge 12 384GB 大規模LLM

AWS Neuron SDK

概要

NeuronはAWS AI半導体用のソフトウェア開発キットです:

  • フレームワーク統合:PyTorch、TensorFlow、JAX対応
  • コンパイラ:モデル最適化と変換
  • ランタイム:効率的な実行環境
  • プロファイラ:パフォーマンス分析ツール

対応フレームワーク

  • PyTorch:torch-neuronx / torch-neuron
  • TensorFlow:tensorflow-neuronx
  • JAX:jax-neuronx
  • Transformers:Hugging Face統合

モデル変換の流れ

  1. 既存のPyTorch/TensorFlowモデルを用意
  2. Neuronコンパイラでコンパイル
  3. 最適化されたモデルをデプロイ
  4. Neuronランタイムで実行

コスト比較

GPUとの価格比較

インスタンス 時間単価 用途
p4d.24xlarge (A100) $32.77 GPU学習
trn1.32xlarge $21.50 Trainium学習
p3.2xlarge (V100) $3.06 GPU推論
inf2.xlarge $0.76 Inferentia推論

コスト削減効果

  • 学習コスト:最大50%削減(GPUインスタンス比)
  • 推論コスト:最大70%削減(GPUインスタンス比)
  • TCO:大規模運用で顕著な効果

対応モデルとユースケース

対応LLM

  • Llama 2/3:7B〜70B
  • Mistral:7B
  • GPT-NeoX:20B
  • BLOOM:176B(分散)
  • Stable Diffusion:画像生成

AWS Bedrockとの連携

  • Bedrock:フルマネージドの生成AIサービス
  • 基盤モデル:Claude、Titan、Llama 2など
  • インフラ:Trainium/Inferentiaで高効率運用

SageMakerとの統合

  • 学習:SageMaker TrainingでTrainiumを使用
  • 推論:SageMaker InferenceでInferentiaを使用
  • MLOps:パイプライン全体でAWSチップを活用

導入事例

Amazon自社サービス

  • Alexa:音声認識・自然言語理解
  • Amazon Search:検索ランキング
  • Prime Video:コンテンツレコメンデーション

外部企業

  • Anthropic:ClaudeモデルのAWS上での運用
  • Stability AI:Stable Diffusionの学習
  • Hugging Face:モデルホスティング

NVIDIA GPUとの使い分け

AWS AI半導体を選ぶべき場合

  • コスト効率を重視
  • AWS上で完結するワークロード
  • 大規模な推論サービス運用
  • Neuron SDKで対応済みのモデル

NVIDIA GPUを選ぶべき場合

  • 最新モデルの即座の対応が必要
  • カスタムモデル開発
  • マルチクラウド運用
  • 既存のCUDAコードベースの活用

今後の展望

ロードマップ

  • 2024年:Trainium2の本格展開
  • 2025年:Trainium3(予測)の開発
  • 2026年以降:さらなる性能向上とモデル対応拡大

競合状況

  • Google TPU:GCP専用チップ
  • Microsoft Maia:Azure向けチップ(開発中)
  • 各社の動向:クラウド大手の自社チップ開発が加速

まとめ

AWS TrainiumとInferentiaは、NVIDIA GPU依存を軽減しながらコスト効率の高いAI処理を実現します。Neuron SDKによるフレームワーク統合も進み、多くのLLMが対応しています。

特に大規模な推論ワークロードでは、Inferentia2の採用でコストを大幅に削減できます。AWSを主要なクラウドとして使用している企業にとって、TrainiumとInferentiaは重要な選択肢となるでしょう。

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