AINOW(エーアイナウ)編集部です。今回は、ノーコード/ローコードAIプラットフォームDifyの2024年4月の最新アップデート情報をお届けします。MCP(Model Context Protocol)による外部ツール連携強化、エージェントの会話記憶機能、信頼性の高いJSON出力機能など、AIアプリケーション開発を加速させる注目の新機能が満載です。最新LLMモデルへの対応も進み、Difyはさらにパワフルなツールへと進化しています。この記事で詳細を確認し、あなたのAI開発プロジェクトに活かしましょう。
この記事のサマリー
- DifyがMCP統合により7000以上のツールとの連携、およびDifyアプリのMCPサーバー化を実現。
- LLMノードにJSONスキーマエディタが追加され、構造化データの出力が容易かつ高信頼に。
- ワークフローエージェントにメモリ機能が搭載され、文脈を維持した対話が可能に。
Difyとは?進化を続けるAIアプリケーション開発プラットフォーム

Difyは、直感的なインターフェースを通じて、複雑なAIアプリケーションやチャットボット、ワークフローを迅速に構築できるプラットフォームです。プログラミングの知識が少ないユーザーでも、大規模言語モデル(LLM)を活用した高度な機能を実装できる点が大きな魅力です。
継続的なアップデートにより、常に最新のAI技術トレンドに対応し、開発者の生産性向上を支援しています。今回の4月のアップデートでも、開発体験をさらに向上させるための重要な機能が複数追加されました。詳しくは、Difyの利用ガイド:Docker、機能、商用利用、GitHub、チャットボット、生成AI、ローカルLLM、RAGの記事もご参照ください。
ノーコード/ローコードでのAI開発
Difyの最大の特徴は、コーディングを最小限に抑え、ビジュアルなインターフェースでAIアプリケーションを構築できる点です。ドラッグ&ドロップ操作でコンポーネントを組み合わせることで、アイデアを素早く形にすることが可能です。これにより、開発サイクルの短縮とコスト削減に貢献します。
多様なLLMへの対応
Difyは、OpenAIのGPTシリーズやAnthropicのClaudeシリーズ、GoogleのGeminiシリーズなど、主要なLLMに幅広く対応しています。ユーザーはプロジェクトの要件や予算に応じて最適なモデルを選択し、柔軟に切り替えることができます。今回のアップデートでは、さらに新しいモデルへの対応が追加され、選択肢が広がりました。
活発なコミュニティと開発
Difyはオープンソースプロジェクトとしても展開されており、GitHub上では活発なコミュニティが存在します。世界中の開発者からのフィードバックやコントリビューションにより、プラットフォームは日々進化を続けています。最新機能の追加や改善が迅速に行われるのも、この活発なコミュニティのおかげです。
MCP統合で実現するDifyアプリの接続性向上

今回のアップデートの目玉の一つが、Model Context Protocol (MCP) の統合による接続性の強化です。MCPは、AIモデルやツール間の連携を簡素化するための新しいプロトコルであり、従来のAPI連携よりも効率的かつ柔軟な連携を可能にします。DifyはこのMCPを活用することで、内外のツールとの連携を大幅に強化しました。
MCPプラグインによる外部ツール連携 (Zapier MCPなど)
コミュニティによって開発されたMCP SSEやMCP Agent Strategyといったプラグインを利用することで、Difyアプリケーションを外部の様々なツールと簡単に接続できるようになりました。特筆すべきは、Zapier MCPなどのサービスを通じて、7000以上ものツールとの連携が可能になる点です。
これにより、例えばDifyで生成したテキストを自動的にGoogle Sheetsに記録したり、Slackに通知したりといったワークフローの自動化が、より容易に実現できます。MCPの導入方法については、Claude MCPの導入方法・使い方:ステップバイステップガイド(初心者向け)も参考になるでしょう。
DifyアプリをMCPサーバーとして共有するメリット
MCP統合は、外部ツールへの接続だけでなく、Difyで作成したアプリケーションを外部に公開する際にも役立ちます。「mcp-server」プラグインを使用することで、開発したDifyアプリ自体をMCPサーバーとして機能させることが可能になります。これにより、他のMCPクライアント(他のアプリケーションやシステム)から、作成したDifyアプリの機能を呼び出すことができます。
これは特に、企業内でのAI機能の共有や、特定の機能をマイクロサービスのように提供したい場合に非常に有効です。プライベートネットワークでの利用が推奨されていますが、組織内でのAI活用を促進する強力な手段となります。FastAPIを用いたMCPサーバー構築に関心がある方は、FastAPIでMCPサーバーを構築する方法とメリットの記事もご覧ください。
将来的なネイティブMCPサポートへの期待
現在はコミュニティプラグインを介したMCPサポートが中心ですが、将来的にはDifyプラットフォーム自体にMCPがネイティブサポートされる計画も示唆されています。これが実現すれば、プラグインの設定なしに、よりシームレスかつ安定したMCP連携が可能になると期待されます。Difyの接続性は今後さらに向上していくことでしょう。
LLMからのJSON出力を確実に:新機能JSONスキーマエディタ

LLM(大規模言語モデル)をアプリケーションに組み込む際、しばしば課題となるのが、構造化されたデータ、特にJSON形式での出力を安定して得ることです。LLMは自由な形式でテキストを生成するため、期待通りのJSONフォーマットで常に出力してくれるとは限りませんでした。この問題を解決するため、DifyのLLMノードにJSONスキーマエディタが新たに追加されました。
従来の課題:LLMからのJSON出力の不安定さ
これまでは、プロンプトエンジニアリングを駆使してLLMにJSON形式での出力を指示する必要がありましたが、それでもフォーマットが崩れたり、必要なキーが含まれていなかったりするケースがありました。出力されたJSONをパースする際にエラーが発生し、後続の処理が停止してしまうなど、アプリケーションの安定性に影響を与える可能性がありました。
JSONスキーマエディタの使い方と効果
新しく追加されたJSONスキーマエディタでは、LLMに期待するJSONの構造(キーの名前、データ型、必須項目など)を視覚的に定義できます。このスキーマ情報をLLMノードに設定すると、Difyが内部的にLLMへの指示を最適化し、定義されたスキーマに厳密に従ったJSONが出力されるようになります。これにより、信頼性の高い構造化データをLLMから安定して取得できるようになります。複雑なデータ構造も定義可能で、開発者は出力フォーマットの揺らぎに悩まされることなく、コア機能の開発に集中できます。
API連携やワークフローでの活用例
この機能は、LLMの生成結果を外部APIに送信したり、他のシステムと連携したりする際に特に有効です。例えば、ユーザーからの問い合わせ内容をLLMで分析し、その結果(カテゴリ、重要度、担当部署など)をJSON形式で取得して、CRMシステムに自動登録するといったワークフローが考えられます。JSONスキーマエディタを使えば、APIが必要とするフォーマットで確実に出力されるため、システム連携の安定性が大幅に向上します。
会話の文脈を記憶:ワークフローエージェントのメモリ機能

Difyのワークフロー機能の中核をなす「エージェントノード」に、待望のメモリ機能が追加されました。これにより、ワークフロー内で動作するAIエージェントが、過去の対話履歴を記憶し、文脈に基づいた応答や処理を行えるようになります。
メモリ機能の有効化と設定
この新機能を利用するには、まず使用しているエージェント戦略プラグインを最新版にアップデートする必要があります。その後、ワークフローエディタ内のエージェントノードの設定画面で、「Memory」という新しいトグルスイッチをオンにするだけです。さらに、「Window Size」というパラメータを調整することで、エージェントが記憶する対話履歴の量を制御できます。ウィンドウサイズを大きくすれば、より長期的な文脈を考慮した対話が可能になりますが、その分、処理に必要なリソース(トークン数など)が増加する可能性があります。
文脈を維持した対話の実現
メモリ機能が有効化されたエージェントは、ユーザーとの複数ターンにわたる対話や、ワークフロー内での過去の処理結果を記憶します。これにより、「前の発言で言及した件について詳しく教えて」「先ほどの指示に基づいて、次のステップに進んで」といった、文脈に依存した指示や質問に対して、より自然で一貫性のある応答が可能になります。
顧客対応チャットボットや、複雑なタスクを実行するAIアシスタントなど、より人間らしい対話が求められるアプリケーションにおいて、その効果を発揮します。AIエージェント同士が連携するAgent-to-Agentのような仕組みにおいても、このメモリ機能は重要な役割を果たすでしょう。また、最先端のAIエージェントである「MANUS」のようなシステム構築にも応用が期待されます。
カスタムプラグイン開発者への影響
自身でDifyのプラグインを開発している開発者向けの情報として、このメモリ機能は `history-messages` という機能を通じて利用可能になっています。カスタムプラグイン内で対話履歴を活用したい場合は、Plugin Dev Docsを参照して実装方法を確認してください。
開発効率を加速:CursorAIによるDifyプラグイン開発チュートリアル

Difyの強力な機能の一つに、カスタムプラグインを追加して機能を拡張できる点があります。しかし、プラグイン開発にはある程度のプログラミング知識が必要でした。今回、AI搭載のコードエディタであるCursorAIを活用して、Difyプラグインを迅速に開発する方法を紹介するチュートリアルが公開されました。
CursorAIとは?
CursorAIは、AIがコーディングを支援してくれる次世代のコードエディタです。コードの自動生成、バグの発見と修正、ドキュメント作成などをAIがサポートし、開発者の生産性を大幅に向上させます。特に、新しい技術やフレームワークを学ぶ際に強力なツールとなります。
チュートリアルの内容
公開されたチュートリアルでは、CursorAIを使いながらDifyのPlugin SDK(ソフトウェア開発キット)の基本を理解し、実際に簡単なプラグインを作成する手順が解説されています。AIの支援を受けながら、プラグインの雛形作成、必要な機能の実装、そしてDifyへのデプロイまでを短時間で行う方法を学ぶことができます。プラグイン開発のハードルを下げることを目的としており、これまでプラグイン開発に挑戦したことがなかった開発者にとっても、良い入門となるでしょう。
期待される効果
このチュートリアルを通じて、より多くの開発者がDifyのプラグイン開発に参加し、Difyエコシステムがさらに活性化することが期待されます。独自のツール連携やカスタム機能を持つプラグインが増えることで、Difyプラットフォーム全体の価値が向上し、ユーザーはより多様なニーズに対応できるようになります。AIを活用したサービス開発に興味がある方は、AIでのサービス・アプリ開発のReplit Agentとは?の記事も参考になるかもしれません。
最新LLMモデルへの対応状況 (Gemini, OpenAI)

Difyは、最新の大規模言語モデル(LLM)への迅速な対応も特徴の一つです。今回のアップデートでは、GoogleとOpenAIからリリースされた新しいモデルがサポート対象に追加されました。
Google Geminiシリーズ
Googleの最新かつ最も高性能なモデルファミリーであるGeminiシリーズから、以下のモデルが利用可能になりました。
- Gemini 1.5 Pro: 高度な推論能力とマルチモーダル対応(テキスト、画像、音声、動画)を特徴とするフラッグシップモデル。
- Gemini 1.5 Flash: Proモデルに匹敵する性能を持ちながら、より高速かつ低コストで利用できるモデル。リアルタイム性が求められるアプリケーションに適しています。
これらのモデルを活用することで、より高度で多様なAIアプリケーションの構築が可能になります。
OpenAIモデル
OpenAIからも、最新のモデルや最適化されたモデルが追加されています。
- GPT-4o (“omni”): テキスト、音声、画像を統合的に処理できる最新のフラッグシップモデル。応答速度が向上し、より自然なインタラクションが可能です。
- GPT-4o mini: GPT-4oの性能を維持しつつ、より高速かつ低コストで利用できるように最適化されたモデル。
- GPT-4 Turbo (2024-04-09版など): 継続的に改善されているGPT-4 Turboの最新バージョンも利用可能です。
これらの新しいOpenAIモデルにより、開発者は性能、速度、コストのバランスを考慮しながら、最適なモデルを選択できます。各モデルの特徴や料金については、ChatGPTのモデルごとの使い方、特徴、機能、料金の一括比較の記事で詳しく解説しています。
モデル選択の重要性
Difyでは、これらの多様なモデルを簡単に切り替えて試すことができます。アプリケーションの要件(精度、速度、コスト、特定の機能など)に合わせて最適なモデルを選択することが、AIアプリケーションのパフォーマンスを最大化する鍵となります。Difyの柔軟なモデル対応は、開発者が常に最先端のAI技術を活用できる環境を提供します。
まとめ:Difyの進化は止まらない

今回のDifyの4月アップデートでは、MCP統合による接続性の大幅な向上、JSONスキーマエディタによる構造化出力の信頼性向上、エージェントメモリ機能による文脈維持能力の獲得など、AIアプリケーション開発の現場で直面する課題に対応する実践的な機能強化が多く行われました。さらに、最新のGemini 1.5 Pro/FlashやGPT-4oシリーズへの対応により、利用できるAIモデルの選択肢も広がりました。
これらのアップデートにより、Difyはノーコード/ローコードでありながら、より高度で信頼性の高いAIアプリケーションを、より効率的に開発できるプラットフォームへと進化しています。CursorAIを活用したプラグイン開発チュートリアルは、開発者コミュニティの活性化にも貢献するでしょう。
Difyは、AI技術の民主化を推進し、誰もがAIの力を活用できる未来を目指しています。今後もDifyの進化に注目し、その機能を最大限に活用して、革新的なAIアプリケーションやサービスを生み出していきましょう。
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