AI×サバイバルクラフトゲームで広がる新たな創造の舞台「Nyric」とは?

ゲームの世界を自由に創造できたら──そんな夢をAIが実現するプラットフォームが「Nyric(ニリック)」です。Lovelace Studioが開発を進めるこのシステムでは、わずかなテキスト指示で広大な3Dワールドを生成し、サバイバルクラフトの要素を交えながら複数プレイヤーと共有可能。

いわば“Midjourney+サバイバルゲーム”のような体験が実現するだけでなく、領域同士を接続してメタバース的な社会を形成することもできると注目されています。本記事では、Nyricのコンセプトや技術背景、ゲームプレイの魅力、そしてLovelace Studioが描く新たなクリエイティブ世界の可能性を徹底解説します。

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1. Lovelace Studioとは

Lovelace Studio(ロヴレーススタジオ)は、AI技術とゲームデザインの融合を目指すベンチャー企業で、数年前から構想を温めてきた「Nyric」というプロジェクトを通じて注目を集めています。CEOのケイラ・コマリ氏や共同創業者のアレックス・エンジェル氏ら、ロボット工学やコンピュータビジョン出身のメンバーを中心に少数精鋭で活動しており、2025年には既に数十万ドルの投資を獲得して開発を進めているとのこと。Nyricは彼らが提唱する「AI × サバイバルクラフト × メタバース」の体現で、ユーザー主導で無限の世界を生み出すプラットフォームとして期待されています。

1-1. Nyric開発の目的とビジョン

Lovelace Studioは「プレイヤーにこそ世界創造の主導権を与える」という理念を掲げています。従来、ゲーム内世界の設計は開発スタジオのみが担っていたため、プレイヤーのクリエイティブ欲求を十分に満たせていない面もありました。Nyricではわずか数行のテキスト入力によって、Midjourneyのように“アリス風”や“バイキング風”など、好きなテイストの3D世界を自動生成できます。

開発者によれば、これは「ソロクリエイターやソーシャルゲーマーがAIツールを使って自分だけのレルム(realm)を作り、それらを相互に接続して大きなコミュニティを形作っていく」ビジョンの一端だといいます。

2. Nyricの特徴

Nyric最大の特徴は、テキストプロンプトを基にAIがプロシージャル生成する「サバイバルクラフト世界」を提供し、その世界で複数のプレイヤーが共に遊べる点にあります。もはや画像生成AIが絵を描くように、ゲーム内世界そのものを“生成”できるという革新を実現しているのです。

2-1. AIを活用したワールド生成

プレイヤーは自分の好みやテーマをテキスト入力し、AIがそれを解析して世界の基本スタイルやバイオーム、構造物を自動生成します。たとえば「アリスの不思議の国のようなファンタジー要素+秋の森のイメージで」と指示すると、森やキノコ、奇妙な扉などが散在する幻想的なマップが一瞬で作られる仕組みです。さらにそこにサバイバル要素やクラフト要素が組み込まれ、プレイヤーは誕生した世界で資源を集め、拠点を作り、モンスターから身を守る活動を行えます。

2-2. プレイヤーの創造性を活かすゲームプレイ

AIが世界の大枠を生成した後も、プレイヤーは手動で建築を行ったりアイテムをクラフトするなどして、“生のキャンバス”を自分好みの色で塗り替えていきます。AIがすべてを決めるのではなく、あくまで人間の創造性を補佐する役割に徹しているのがNyric流。世界がベースとして用意されたら、あとはプレイヤーの手で細かな景観や設定を作り込み、唯一無二の冒険の場を完成させるというわけです。

2-3. サバイバルクラフトとメタバース要素の融合

Nyricは生成された世界が孤立して終わらないのも特徴です。各世界(レルム)は六角形の区画として扱われ、他プレイヤーのレルムと接続することが可能。互いに交易関係を築いたり、外交や領地拡張を行ったりして、“メタバース的な持続する社会空間”を形成できます。あるプレイヤーのレルム同士が結合して大きなコミュニティを形成する様は、まさに「複数のMinecraftサーバーがひとつのメガワールドに統合される」イメージにも近いでしょう。

3. Nyricの技術的アプローチ

Lovelace Studioは長年、ロボット工学やコンピュータビジョンの知見をベースに、テキスト入力から3D環境を生み出すパイプラインを研究してきました。Nyricでは既存のAIモデル(例:OpenAIのAPI)を活用しつつ、独自のプロシージャル生成エンジンを組み合わせている点がポイントです。

3-1. プロシージャル生成とAIの活用

テキストプロンプトを解析すると、バイオーム(森林、砂漠、雪原など)やテイスト(ファンタジー、スチームパンク、サイバーパンクなど)が推定され、さらに敵の有無や天候、建物の存在など詳細なパラメータが自動設定されます。こうしてAIが示したパラメータに沿ってプロシージャル生成エンジンが3Dマップを構築。プレイヤーはログイン後にすぐ、その生成された大地を探索したり資源を採取したりできます。

3-2. Faebotによるインタラクティブな体験

ゲーム内では“Faebot”と呼ばれるAIコンパニオンが存在し、プレイヤーとのやり取りを通じて世界の説明をしたり、過去のイベントを記憶してストーリーに深みを与えたりします。Faebotはプレイヤーの操作や意思決定を学習し、状況に応じてヒントやジョークを投げかけるなど、単なるガイドを超えた“キャラクター性”を持つ要素として注目されています。

3-3. マルチバイオームとカスタマイズ可能な環境

生成された世界には複数のバイオームが入り混じり、プレイヤーは独自の環境パラメータを調整できます。空や天候、地形の特徴などを微調整し、奇妙な自然現象や幻想的な風景を演出することも可能です。仕上がった世界は文字通り“自分だけの作品”となり、遊び方に合わせて自由に変化させられます。

4. ゲームプレイとコミュニティ要素

Nyricはサバイバルクラフトとしてのゲーム性に加え、プレイヤー同士の繋がりを重視するメタバース的要素を備えています。単なる一人用サンドボックスではなく、レルムを跨ぐ経済・外交も楽しめるという点が魅力です。

4-1. プレイヤー間の交流と社会ネットワーク形成

各プレイヤーが生成したレルムは、六角形のグリッドとして他プレイヤーのレルムと隣接し、相互に行き来することができます。この仕組みにより、単独の世界に留まらず、友人同士や未知のプレイヤーとも繋がって協力・交易したり、対立したりするネットワークが形成されます。自分のレルムを拡張して勢力を築き上げるもよし、他プレイヤーとの交渉を重視して共同発展を目指すもよし——多様なプレイスタイルが共存できるのです。

4-2. 経済と外交要素を取り入れたゲームシステム

レルムごとに得意資源や希少アイテムが存在し、それらを交易することで経済圏が生まれます。プレイヤーは自分のレルムを成長させるだけでなく、外交や同盟、対立などメタゲーム的な駆け引きを行うことが可能。こうして複数のレルムが連鎖して相互作用を起こし、大きな社会ネットワークへと発展するのがNyricの醍醐味です。

5. 競合との差別化ポイント

AI活用のゲームやプラットフォームは急増していますが、Nyricは「生成+サバイバルクラフト+マルチバース」という点で独自性を打ち出しています。以下では代表的な競合との差別化要素を簡単に整理します。

5-1. 他のAIゲームプラットフォームとの違い

画像生成や文章生成に特化したAIゲームプロジェクトは多く登場しましたが、それらは“見た目の驚き”や“一時的な実験”に留まる場合がしばしば。Nyricの場合、**サバイバル要素や継続的な社会性**(レルム接続・交易・外交)を重視しているため、単発の体験ではなく長期間遊べるゲームとして成立する点が強みです。

5-2. 他のサバイバルクラフトゲーム(例:Minecraft、Valheim)との比較

MinecraftやValheimなど、サバイバルクラフトの名作は数多く存在します。これらは手動でブロックを積んだり手作り感を大切にする一方、Nyricは「AIが世界の枠組みを生成し、そこから人間の手で細かく作り込みを行う」という構造。しかも複数のワールドが接続できる仕組みや、Faebotなど独自のAIコンパニオンが導入されており、“世界生成の自由度”という点では比較にならないほど広がりがあるとされています。

6. 開発チームと今後の展望

Lovelace Studioはケイラ・コマリ氏とアレックス・エンジェル氏が共同創業し、ボストンを拠点に活動中。2022年に50万ドルを超える出資を獲得し、シード段階から開発を続けています。ロボット工学やコンピュータビジョンに強いメンバーが多数在籍しており、AI技術の応用に長けたチームと言えます。

6-1. 投資と資金調達状況

Sequoia Capital ScoutやHalfCourt Venturesなど有力VCが既に出資しており、今後はさらなるラウンドで追加資金を調達予定。AIやメタバース領域が世界的に注目される中、Nyricのような“生成×サバイバルクラフト×ソーシャル”という総合的なビジョンが評価されているとみられます。

6-2. 現在の開発状況とロードマップ

Nyricはすでにアルファ段階のテストを行っており、公式Discordでのテスター募集やコミュニティ形成が進んでいます。将来的にはSteamを中心にした早期アクセスや、拡張機能の実装、キャラクターデザインやグラフィカルなアップデートを計画中。正式リリース時期は2025年内を目標としており、それ以降も定期的な機能追加やイベント開催を予定しているとのことです。

まとめ

Lovelace Studioが開発を進める「Nyric」は、ジェネレーティブAIを活用してサバイバルクラフト型の3Dワールドを瞬時に生み出す、まさに新時代のゲームプラットフォームです。Midjourneyのようにテキスト指示で世界観を決め、そこから資源収集や建築、他プレイヤーとの交易や外交までこなせる奥深いゲームプレイが実現されようとしています。

単なるメタバースでもなく、単なるAI画像生成アプリでもないという点で、Nyricは「創造とプレイの共生」という従来にはない新境地を切り拓いていると言えます。Lovelace Studioのケイラ・コマリ氏やアレックス・エンジェル氏は、ロボット工学や長年のゲーム開発経験を活かし、将来的に数多くのプレイヤーがつながる“マルチバース”を形成したいと意気込んでいます。今後の展開によっては、Minecraft以来の革命が生まれる可能性もあるでしょう。Nyricが見せる「プレイヤー主導のAIゲーム創造」は、クリエイティブエンターテインメントの新たな幕開けと言っても過言ではありません。

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