【Liquid AI】MIT発「液体ニューラルネットワーク」駆使で汎用AI時代へ:軽量・適応型モデルが競合を凌駕する理由

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こんにちは。AI・生成AIを経営・事業に生かすメディア「AINOW」のAINOW編集部です。近年、世界的なスタートアップシーンの加速と資本市場の活況を背景に、時価総額1000億円を超える「ユニコーン企業」が次々と誕生しています。2024年は特に、急成長するAI関連企業や革新的なビジネスモデルを有する新興企業が台頭し、既存産業を塗り替える動きも活発化しています。本記事では、その中でも注目される新興プレイヤーの一例として、MIT発のスタートアップ「Liquid AI」を取り上げ、その技術的背景や市場での位置づけ、今後の展望を考察します。

Liquid AI:新たなAIモデル「Liquid Neural Networks」で一般的AI(AGI)を目指す

MIT発のスタートアップ「Liquid AI」は、比較的新しいAIモデルである「リキッド・ニューラル・ネットワーク(Liquid Neural Network)」を武器に、汎用的なAIシステムの構築を目指しています。2024年12月14日に公開された情報によれば、Liquid AIは2段階のシードラウンドで3,750万ドル(約37.5億円)もの資金調達に成功し、評価額は3億300万ドル(約303億円)に達しています。

Liquid AI: あらゆる規模で高性能で効率的な汎用 AI システムを構築します。
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ロボティクス分野の権威、Daniela Rus氏が共同創業

Liquid AIの共同創業者には、ロボティクス分野で著名なMIT教授のDaniela Rus氏が名を連ねています。CEOにはRamin Hasani氏、CTOにはMathias Lechner氏、チーフ・サイエンティフィック・オフィサー(CSO)にはAlexander Amini氏が就任。彼らはMITで長年研究を重ね、Liquid Neural Networksという独特のモデルアーキテクチャを発展させてきました。

Liquid Neural Networkとは?

Liquid Neural Networkは、「ニューロン」同士の相互作用を時間関数として定義し、時系列データや文脈に動的に適応する特殊なアーキテクチャです。従来の大規模モデル(GPT-3など)が数十万〜数十億というパラメータを要するのに対し、Liquid Neural Networkはパラメータ数が圧倒的に少なく、計算資源を抑えながら柔軟な学習・推論が可能です。

例えば、GPT-3のようなモデルは1750億パラメータを持ち、約5万のニューロンを搭載しますが、特定タスク向けのLiquid Neural Networkは2万パラメータ、ニューロン数も20程度と極めてコンパクトです。これにより、Raspberry Piのような低スペック機器でも動作可能な点が強みです。

連続的な適応と高い汎用性

Liquid Neural Networkのもう一つの特長は、リアルタイムでパラメータを適応させる能力。変動する環境や未知の状況下でも追加学習なしで対応できるため、ドローンの自律飛行や天候変化への対処など、動的なフィールドで性能を発揮します。学習に使用されるデータが時系列的変化を含む場合、データが更新されるたびにモデルを再トレーニングする必要が減少する点も、運用コスト削減に寄与します。

用途の広がり:物流から金融、バイオテックまで

Liquid AIは、Liquid Neural Networkを汎用的な手法として位置付けています。特に時系列データを扱うシナリオ—電力グリッド、医療データ、金融トランザクション、気象予測など—で強みを発揮します。また、コンパクトなモデルサイズと高い適応力により、自動運転やドローン制御、産業ロボットなど、リアルタイム性と高い信頼性が求められる応用分野にも最適です。

自律ナビゲーションの実証

Rus氏らは、Liquid Neural Networkを搭載したドローンにプロの操縦データを学習させ、森林や都市部など多様な環境でテストしたところ、他モデルよりも安定かつ汎用的なナビゲーションが可能であることを確認しています。ノイズや未学習の障害物があっても適応する能力は、「本番環境で役立つ」ことを実証しています。 —

Liquid AIが目指す市場戦略と協業

Liquid AIは、Liquid Neural Networkの商用化を目標に掲げ、幅広いカスタマーセグメントに対応したプロダクトを提供しようとしています。同社はドメイン特化やファウンデーションモデルの開発に注力しつつ、オンプレミスやプライベートクラウド環境でのAIインフラ提供も計画中です。これにより、顧客は自社ニーズに合ったモデルをカスタマイズし、運用できるようになります。

競合との比較:GPT系モデルとの差別化

Liquid AIは、自身を「GPTに代表される大規模モデルとの競合相手」と位置付け、より少ない計算資源で同等以上のタスク遂行能力、ならびに適応性をアピールしています。GPTモデルが巨大なパラメータ数と膨大な計算コストを伴うのに対し、Liquid Neural Networkは軽量で解釈性にも優れる点が差別化要因です。また、モデルをドメイン特化させることで、特定ビジネス領域での精度向上やコスト削減が可能となります。

AMDをはじめとする投資家との連携

Liquid AIは、3.75億ドルの調達と同時に、評価額20億ドル以上に達するシリーズAラウンドでAMDがリード投資家として参画したと報じられています(Bloombergより)。

AMDと連携することで、同社のGPUやCPU、AIアクセラレータ上でLiquid Neural Networkの最適化を進める計画です。これにより、さらなる高速化やスケール拡大が期待できます。 —

今後の展望とLiquid Neural Networkの可能性

さらなる研究開発とスケール拡大

Liquid Neural Networkは比較的新しいアーキテクチャであり、まだ研究途上にあります。2022年にはRus氏の研究室が、従来困難だったスケールアップを実現する方法を見出したと報告されており、将来的にはさらなる性能向上や応用範囲の拡大が見込まれます。

データ統合・顧客ニーズ対応プラットフォームへ

Liquid AIは、単なるモデル提供にとどまらず、オンプレミスやプライベートクラウドでの導入を含め、顧客が独自モデルを構築・運用できるプラットフォーム構築を予定しています。これにより、多様な企業ニーズに合わせた柔軟なソリューションを提供し、AI運用の専門知識不足という課題をクリアする狙いがあります。

安全性と信頼性、コンプライアンス面でも、Liquid AIは多層的なアプローチをとっており、大規模モデルの責任ある活用を実現しようとしています。

まとめ

Liquid AIは、MIT研究者陣が生み出したLiquid Neural Networkを商用化し、汎用的なAI構築への新たな道を示そうとしています。その特徴は、従来の巨大モデルと異なり、軽量かつ動的な適応性を持ち、計算コストを抑えながら高い性能と解釈性を両立する点です。

ドローンの自律飛行や電力網の安定化、医療・金融・気候など多様な分野への応用が期待され、オンプレミス対応やドメイン特化モデルの提供によってビジネス展開も柔軟に対応可能です。投資家からの豊富な資金調達やAMDとの協業により、技術的基盤と市場展開力を強化しつつ、Liquid Neural Networkを中核とした新たなAIエコシステムを築いていくとみられます。

2024年以降、競合するGPT系モデルとの対比も含め、Liquid AIがどれだけ市場にインパクトを与え、拡大するかに注目が集まっています。これまでのAIモデルの常識を覆し、より柔軟で持続可能なAI運用を実現する「Liquid Neural Network」の進化は、企業が直面するデータ活用の新たな可能性を示す重要なステップと言えるでしょう。

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