こんにちは。AINow編集部です。 生成AI(Generative AI)は、ビジネスの様々な領域で活用が期待される革新的な技術ですが、その導入方法には、クラウドサービスとオンプレミスの2つの選択肢があります。
生成AIをオンプレミスで導入するケースも増えつつあり、セキュリティ強化やカスタマイズ性の向上といったメリットが注目されています。
この記事では、生成AIとオンプレミスの基本的な解説から、オンプレミス導入のメリット・デメリット、具体的な導入手順、そして実際の活用事例まで、詳しく解説していきます。
生成AIとは
生成AIは、人工知能 (AI) の一種で、学習したデータに基づいて、新しいデータやコンテンツを創造することができます。テキスト、画像、音声、コードなど、様々な種類のデータを生成することができ、近年、急速に発展しています。
生成AIの基本的な仕組み
生成AIは、大量のデータから学習することで、データに内在するパターンや特徴を捉え、それを元に新しいコンテンツを生成します。例えば、大量の画像データを学習した生成AIは、新しい画像を生成したり、既存の画像を編集したりすることができます。
生成AIの歴史と進化
生成AIの起源は、1950年代にまで遡ることができます。しかし、生成AIが本格的に発展したのは、2010年代以降、深層学習 (Deep Learning) 技術が登場してからといえるでしょう。深層学習は、人間の脳の神経回路を模倣したニューラルネットワークを用いた機械学習手法であり、従来の機械学習手法よりも、複雑なデータのパターンを学習することができます。
深層学習の発展により、生成AIは、より高精度で、より多様なコンテンツを生成できるようになり、画像生成、文章生成、音声合成、音楽生成、コード生成など、様々な分野で活用されています。
オンプレミスとは
オンプレミス (on-premises) とは、自社のサーバーやコンピューターにソフトウェアやシステムを導入し、運用する方法のことです。クラウドサービスとは対照的な概念であり、自社でITインフラストラクチャを管理するため、高いセキュリティとカスタマイズ性を実現できる点が特徴です。
オンプレミスの定義
オンプレミスは、ITインフラストラクチャを自社で所有し、管理することを意味します。企業は、自社のサーバー、ネットワーク機器、ストレージなどを、自社のデータセンターやオフィス内に設置し、運用します。
オンプレミスとクラウドの違い
オンプレミスとクラウドサービスの主な違いは、以下の点が挙げられます。
項目 | オンプレミス | クラウドサービス |
インフラストラクチャの所有 | 自社 | クラウドプロバイダー |
管理責任 | 自社 | クラウドプロバイダー |
コスト | 高い初期費用、低い運用費用 | 低い初期費用、高い運用費用 |
セキュリティ | 高い | クラウドプロバイダーのセキュリティレベルに依存 |
カスタマイズ性 | 高い | 制限あり |
スケーラビリティ | 低い | 高い |
オンプレミスは、セキュリティやカスタマイズ性の面で優れていますが、初期費用が高く、スケーラビリティが低いというデメリットがあります。
一方、クラウドサービスは、初期費用が低く、スケーラビリティが高いというメリットがありますが、セキュリティやカスタマイズ性の面では、オンプレミスに劣ります。
生成AIをオンプレミスで導入するメリット
生成AIをオンプレミスで導入するメリットは、以下の点が挙げられます。
セキュリティの高さ
生成AIをオンプレミスで導入する最大のメリットは、セキュリティの高さです。生成AIは、大量のデータを学習するため、データ漏洩のリスクがあります。オンプレミスで導入すれば、データを自社内で管理することができるため、外部へのデータ漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
カスタマイズの自由度
オンプレミスで導入すれば、生成AIシステムを自社のニーズに合わせて自由にカスタマイズすることができます。例えば、特定の業務に特化した生成AIモデルを開発したり、独自のセキュリティ対策を施したりすることができます。
既存システムとの統合の容易さ
オンプレミスで導入すれば、生成AIシステムを、既存の業務システムと容易に統合することができます。これは、生成AIを既存の業務プロセスにスムーズに組み込む上で、重要なメリットとなります。
安定した通信速度
オンプレミスで導入すれば、インターネット回線の速度に影響されずに、安定した速度で生成AIシステムを利用することができます。これは、生成AIをリアルタイムで利用する必要がある業務 (例: チャットボット) にとって、重要なメリットとなります。
長期的なコスト削減
生成AIをクラウドサービスとして利用する場合は、利用量に応じて料金が発生します。一方、オンプレミスで導入すれば、初期費用は高くなりますが、長期的に見ると、コスト削減になる場合があります。
外部プロバイダーの影響を受けない
オンプレミスで導入すれば、クラウドサービスプロバイダーのサービス停止や料金改定などの影響を受けません。自社でシステムを管理するため、安定した運用が可能になります。
生成AIをオンプレミスで導入するデメリット・注意点
オンプレミス導入には、メリットだけでなく、デメリットや注意点も存在します。
初期的な導入コストの高さ
オンプレミスで生成AIを導入する場合は、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、そして生成AIソフトウェアのライセンス費用など、初期費用が高額になる傾向があります。
サーバー設置スペースの確保
オンプレミスで導入する場合は、サーバーを設置するためのスペースを確保する必要があります。データセンターを借りる場合は、賃料や電気代などの費用も発生します。
メンテナンスの手間
オンプレミスで導入する場合は、自社でシステムの運用・保守を行う必要があります。サーバーの監視、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策など、専門的な知識とスキルが必要になります。
オンプレミスで使える生成AIツール
オンプレミスで導入できる生成AIツールは、オープンソースのものが主流です。ここでは、代表的な3つのツールを紹介します。
LLaMa 3
LLaMa 3は、Metaが開発したオープンソースの大規模言語モデル (LLM) です。LLaMa 3は、商用利用も可能なライセンスで公開されており、オンプレミスで導入することができます。LLaMa 3は、文章生成、翻訳、要約、質問応答など、様々なタスクに対応することができます。
Gemma
Gemmaは、Googleが開発したオープンソースの大規模言語モデルです。Gemmaは、研究目的だけでなく、商用利用も可能なライセンスで公開されており、オンプレミスで導入することができます。Gemmaは、LLaMa 3と同様に、様々な自然言語処理タスクに対応することができます。
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、Stability AIが開発したオープンソースの画像生成AIです。Stable Diffusionは、テキストから画像を生成することができます。Stable Diffusionは、オンプレミスで導入することで、生成された画像の著作権を自社で保有することができます。
オンプレミスへの生成AI導入手順
オンプレミスに生成AIを導入する手順は、以下のようになります。
必要なハードウェアの選定
生成AIは、大量のデータを処理するため、高性能なハードウェアが必要です。生成AIモデルの規模や処理量に応じて、適切なCPU、GPU、メモリ、ストレージなどを選定する必要があります。
ソフトウェアのインストールと設定
生成AIツールをダウンロードし、インストールします。生成AIツールは、Pythonなどのプログラミング言語で動作するため、必要なプログラミング言語環境も構築する必要があります。また、生成AIツールを動作させるために、必要なライブラリやフレームワークなどもインストールする必要があります。
セキュリティ対策の実施
生成AIシステムをオンプレミスで運用する場合は、自社でセキュリティ対策を行う必要があります。アクセス制御、データ暗号化、脆弱性診断など、適切なセキュリティ対策を講じることで、データ漏洩やサイバー攻撃のリスクを最小限に抑えることができます。
運用とメンテナンスの計画
生成AIシステムを安定稼働させるためには、運用とメンテナンスの計画を立てておく必要があります。サーバーの監視、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策など、定期的なメンテナンス作業が必要です。
事例:オンプレミスでの生成AI活用例
オンプレミスで生成AIを導入する企業は、年々増加しています。ここでは、具体的な活用事例を3つ紹介します。
大手金融企業での導入
ある大手金融企業は、顧客の個人情報を含むデータを扱うため、セキュリティを重視し、生成AIをオンプレミスで導入しました。生成AIは、顧客の投資行動を分析し、パーソナライズされた投資アドバイスを提供するために活用されています。
製造業での実例
ある製造業の企業は、工場の生産ラインのデータを分析し、生産効率を向上させるために、生成AIをオンプレミスで導入しました。生成AIは、センサーデータや稼働状況などを分析し、最適な生産計画を立案するために活用されています。
教育機関での活用
ある教育機関は、学生の学習状況を分析し、個別指導に役立てるために、生成AIをオンプレミスで導入しました。生成AIは、学生のテスト結果や学習履歴などを分析し、学生一人ひとりに最適な学習プランを提案するために活用されています。
よくある質問 (FAQ)
生成AIのオンプレミス導入に関するよくある質問と回答をまとめました。
生成AIとクラウドの違いは何ですか?
生成AIは、技術の名称であり、クラウドはサービス提供形態の名称です。生成AIは、クラウドサービスとして提供される場合もあれば、オンプレミスで導入される場合もあります。
オンプレミスで導入する際の初期コストはどれくらい?
生成AIをオンプレミスで導入する際の初期コストは、必要なハードウェア、ソフトウェア、そして導入・設定費用などを含めて、数百万円から数千万円程度かかる場合が多いです。
生成AIのセキュリティ対策はどうするの?
生成AIシステムをオンプレミスで運用する場合は、自社でセキュリティ対策を行う必要があります。アクセス制御、データ暗号化、脆弱性診断など、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。NECは、「NEC 生成AI オンプレ」というサービス名で、生成AIのオンプレミス導入を支援するサービスを提供しています。
まとめ
生成AIをオンプレミスで導入するメリットは、セキュリティ強化、カスタマイズ性の向上、既存システムとの統合の容易さなどがあります。一方、初期費用が高額になることや、運用・保守の負担が大きいことなどがデメリットとして挙げられます。生成AIを導入する際には、クラウドとオンプレミスのどちらが自社にとって最適な選択肢なのか、メリットとデメリットを比較検討することが重要です。
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